私が1歳児クラスの担任の時多かった質問が
「うちの子、お友達と遊べていますか?」
「いつも一人で遊んでいるけど大丈夫ですか?」
という質問を受けることが度々ありました。
保育士目線からすると子どもの一人遊びの時間はとても大切で、成長に必要な時間だと思っています。ですが、保護者からすると、「他の子と遊ばないけど大丈夫かな?」と心配になることも多いようです。
そこで今回は、一人遊びの重要性と発達の見通しをお伝えしたいと思います。

この記事を読むと、一人遊びを通じて子どもが得られる力や、一人遊びの重要性、やがて友達と遊ぶようになる過程を知ることができ、子どもの発達をより温かく見守ることができるようになりますよ。
一人遊びの発達段階における意味
まず理解しておきたいのは、乳幼児期の一人遊びは自然な発達段階の一部であるということです。生後数ヶ月から1歳半頃の子どもは、まだ他者との関わりを積極的に求める時期ではなく、自分の目の前にある物事や自分の体の動きに興味を持つ時期です。この段階では、保護者が「誰かと遊んでいない」と心配するよりも、子どもがどのように一人で遊び、どのような行動をとっているのかを観察し、その成長を見守ることがとても大切です。
例えば、赤ちゃんが積み木を一つ一つ並べたり、絵本を自分でめくったりする行為は、まさに一人遊びの一環です。これは単なる時間つぶしではなく、手先の動きや目と手の協調を学び、「こうするとどうなるかな?」と興味を持って主体的に遊んでいるのです。ですので、子どもが一人で集中して遊んでいる時には保育者としてはその時間を十分確保してあげるように援助しています。保育園でお迎えに行った時、一人で遊んでいる姿を見ると、「うちの子、遊んでもらえていないのかな?」と不安になるかもしれませんが、そうではないことがわかりますね。子どもたちは一人遊びを通じて、興味を広げたり、自分なりの問題を解決する力を養っていき、満足する体験を通じて自己肯定感を高めていきます。
乳幼児期の一人遊びは、子どもが自分自身で考え、創造的に遊ぶ時間を持つことができる大切な時間です。この一人遊びを通して、子どもは自己探索を行い、内面的な世界を広げていきます。特に、2~3歳頃は自分の身体や感覚に集中する時期であり、周囲の環境との相互作用を少しずつ理解し始める段階です。この時期に一人遊びが見られることは、発達において非常に正常なプロセスであり、自我の発達にとって不可欠です。
一人遊びしかしないことへの不安
「うちの子はいつも一人で遊んでいて、他の子どもと一緒に遊ばないけど大丈夫かな?」という保護者からの声はよく聞かれます。この心配はよく理解できますが、他者との関わりが少ないからといって、すぐに問題があるわけではありません。特に3歳前後の子どもにとっては、まだ「並行遊び」という段階で、他の子どもと同じ空間にいても、お互いに遊びを共有せずに、並んで遊ぶことがよくあります。この段階で一人遊びが続くことは、発達の一環として自然なことです。
ただし、一人遊びが長期的に続き、全く他者との交流を持たない場合や、極端に他者を避けるような傾向が見られる場合は、発達の偏りがないか慎重に観察する必要があります。まずは焦らず、子どもの遊びの様子を見守りましょう。
自立心と想像力を育む大切な時間
一人遊びの大きなメリットは、自立心と想像力を育むチャンスであるということです。子どもが一人でごっこ遊びをしているとき、その遊びは現実世界とは違う「想像の世界」を生み出します。お人形がお話しをしたり、おもちゃの車が動き回ったりするのは、子どもが自分なりのストーリーを作り上げている証拠です。これによって、想像力が豊かになり、問題解決能力も自然と養われます。こうした創造的な遊びは、後に学業や社会生活で必要となる「発想力」や「考える力」の基盤となります。
保護者としては、一人遊びを「放置」や「孤立」と捉えるのではなく、むしろその時間が子どもの発達を促す重要な要素であると理解することが大切です。
集中力や自己解決力の向上
また、子どもの一人遊びが充実するということは、自己解決力や集中力が育っていくことに繋がります。例えば、積み木を一人で並べる遊びでは、バランス感覚や空間認識力、手先の器用さが自然に鍛えられます。また、遊びを通じて自分のペースで試行錯誤することで、自己肯定感や達成感を感じることができ、結果的に自信を持つ子どもに成長する可能性が高まります。このように、集中して何かに取り組む力は、学習や問題解決に必要な「自己解決力」を育む基盤となります。
このように、一人遊びをすることによって、自分で考えやってみようとする力が育ち、うまくいかない経験や試行錯誤しながら挑戦する力、そしてうまく行った経験による自己肯定感の高まり、このような力が後々の学習や社会生活においても役立つ能力の基盤となっていくのです。子どもが一つの遊びに長時間集中して取り組む姿は、非常に大切な成長のサインです。現代社会では、集中力を維持することが難しい環境が多くありますが、幼少期から集中して遊ぶ経験を積むことで、後に学習や社会生活での集中力が向上することが期待できます。
安心、集中して遊べる環境づくり
一人遊びが発達の一環であるとはいえ、保護者としてはどのようにサポートしていけば良いか気になるところです。まず、一人遊びの時間を尊重し、子どもが集中して遊べる環境を整えることが大切です。例えば、おもちゃや道具を適切に配置しておくことで、子どもが自由に選んで遊びに集中できるようにすることができます。特に乳幼児期には、自分で好きなものを選び、自分のペースで遊びを展開する時間が重要です。
そして、一人遊びをじっくり楽しむには、子どもが安心して遊べる環境を整えることが大切です。子どもは、安心感があると自由に自分の力を発揮することができます。例えば、親や保育者が近くにいて、見守っていることが感じられる環境では、子どもは安心して一人遊びを楽しむことができます。逆に、誰もいないところで長時間一人遊びをさせられると、不安感が生じてしまい、遊びがうまく進まないこともあります。
一人で遊んでいる時には親としてはその時間をたっぷりと保証してあげることが大切ですが、それはほったらかしておくのとは全く異なるということですね。安心できる環境にあるからこそ、子どもは集中して遊ぶことができます。子どもの遊びを近くで見守っていると、「できたよ!!」と子どもが満足した時にはきっと親の目を見る瞬間があるはずです。その視線を逃さず、「できたね!!」と十分に気持ちを受け止めてあげましょう。
また、一人遊びの中で何をしているのかを観察することも重要です。積み木を並べて遊んでいるのか、絵本を黙々と見ているのか、特定のおもちゃに興味を示しているのか――そういった細かい観察を通して、子どもがどのような興味を持ち、どのような発達段階にいるのかを理解することができます。この観察は、保護者が子どもの成長をより深く理解するための手がかりとなります。
友達作りと社会性の発達
友達との遊びは、社会性の発達に大きな影響を与えますが、まずは一人遊びで培った「自分だけの時間」を通じて、自分のペースを確立していくことが大切です。一人遊びを通じて自分で考え、物事に対処する力が育っていれば、他者と関わる時もその力が役立ちます。例えば、ごっこ遊びの中で「店員さん」や「お客さん」といった役割を交代しながら遊ぶ場面では、相手の気持ちを考えながら行動する必要があります。こうした遊びの中で、他者との関係性を学び、共感する力を養っていくことができます。
社会性の発達は、集団遊びだけでなく一人遊びの積み重ねでも育まれるため、どちらもバランスよく経験させることが大切です。大人ができることは、子どもが一人で遊びたいと感じる時はその自由を尊重し、友達と遊びたいという意欲が出てきたら、その環境を整えてあげることです。
一人遊びから他者へと興味が移る時
一人遊びが中心であっても、徐々に他者への興味が出てくることは自然な流れです。保育園など集団生活の場では、子どもは他の子どもの存在を意識し始めます。最初は、ただ一緒にいるだけで直接的な関わりがなくても、少しずつお互いの遊びを見たり真似たりするようになります。この段階を「並行遊び」と呼びますが、ここでもまだ一人遊びの要素は強く残っています。
一人遊びは、子どもの成長にとって重要なステップですが、いずれ子どもは他者への興味を持ち、友達や大人と遊ぶことが増えていきます。ここで重要なのは、一人遊びがその「橋渡し」となる役割を果たすという点です。自分自身の遊びに集中し、十分に満足感を得た子どもは、自然と他者への興味を持ち始めます。最初は親や保育者、次第に他の子どもたちとの関わりが増え、集団生活に馴染むようになります。
子どもが一人遊びから他者との関わりへ移行する時期は個人差がありますが、一般的には2歳半から3歳頃に見られることが多いです。この時期になると、子どもたちは他の子どもと一緒に遊ぶことに興味を持ち始め、「ごっこ遊び」や「役割遊び」といった形で、他者との協同遊びが増えていきます。ここで大切なのは、無理に集団遊びを促すのではなく、子どものペースに合わせて自然な形で遊びの幅を広げていくことです。
少しずつ他者との遊びが広がる
発達心理学では、3~4歳になると「協同遊び」や「模倣遊び」といった他の子どもとの関わりが増えてくると言われています。この時期になると、一人で遊ぶことから、他者と協力して遊ぶことや、他の子どもの遊びを真似てみることが増えていきます。この段階においても、まだ一人遊びを好む場合がありますが、心配し過ぎることはありません。一人遊びを通じて、子ども自身が安心できる空間で遊びながら、少しずつ他者との関わりを取り入れている証拠でもあります。焦らずその子の興味が今どこにあるのかを見守っていきましょう。
一人遊びが盛んな子どもも、自分の世界を十分に楽しむと、次第に他者に興味を持ち始めます。そのきっかけは、家庭内のコミュニケーションや保育園での経験、または日常の何気ない出来事から生まれることが多いです。例えば、親が友達との楽しい時間を話題にすることで、子どももその遊びに興味を持つようになります。また、保育園で他の子どもたちが楽しそうに遊んでいる姿を見て、「あの子たちのように遊びたい」という気持ちが芽生えることもあります。
このように、子どもが他者との関わりに興味を持ち始めたら、そのタイミングを見逃さず、友達と一緒に遊べる機会を提供していくことが大切です。特に幼児期は、遊びを通じて多くのことを学ぶ時期なので、自由に遊びを楽しむ環境を整えつつ、適切なタイミングでサポートしていくことが重要です。まだ上手にコミュニケーションが取れないことも多いですから、子どもの気持ちを「〇〇だったの?」と代弁しながら、相手のこの気持ちにも少しずつ気が付けるように声掛けをしていくのがポイントです。
その後、時間が経つと「協同遊び」に移行します。協同遊びでは、友達と一緒に遊びを作り上げたり、ルールを共有したりして楽しむことが増えます。この段階に至ると、一人遊びしかできなかった子どもでも、他者との関わり方が自然に身についていくでしょう。この過程を見守り、無理に社会的な遊びを強制せず、子どものペースに合わせて関わりを増やしていくことが大切です。
一人遊びの時間をたっぷり楽しんで
一人遊びしかしない子どもに対して心配する気持ちは、親として当然のことです。しかし、発達の個人差を理解し、焦らずに見守ることが大切です。大切なのは、その子のペースに合わせてサポートし、無理に他者との関わりを強制しないことです。子どもはそれぞれのペースで成長し、やがて自然と他者との関わりに興味を持つようになります。
また、保護者自身も子どもとのコミュニケーションを通じて、その子がどのような遊びに興味を持っているのか、どのようにして遊びたいのかを探りながらサポートすることが大切です。例えば、子どもが「一緒に遊ぼう」と言ってきたときには、その時間を共有し、楽しむことで、子どもは「他者との遊びも楽しい」という感覚を持つようになります。
さらに、保育園や幼稚園では、保護者が子どもの成長を保育者と共有することも重要です。保育者は子どもの一日の過ごし方や他の子どもたちとの関わりをよく観察しているため、保護者とのコミュニケーションを通じて、子どもの発達の状況を理解し、適切なサポートを行うことができます。
一人遊びがもたらす未来
一人遊びの経験を重ねた子どもは、自己肯定感が高く、自分で物事を考え行動する力が育っています。これが将来の学びや人間関係において大きな強みとなります。例えば、小学校に進学した際に、授業中に集中して取り組む力や、グループ活動で他者と協力する力が自然と身についていることが期待できます。
一人遊びは、決して他者と関わらない「孤独な時間」ではなく、自分自身を育てるための重要な時間です。保護者が子どもに対してできることの一つは、適度に声をかけながらも干渉しすぎないことです。一人遊びをする時間は、子どもにとって自分自身と向き合い、成長していく大事なプロセスです。しかし、時には遊びに参加してほしいサインを出すこともあります。その際には、遊びをリードするのではなく、子どものペースに合わせて一緒に遊びを楽しむことが重要です。子どもが自分の世界で自由に遊び、その中で発見し、成長する姿を保護者として見守り、その成長を喜んでいきましょう。
そして、子どもが他の子どもに対して興味を示し始めたら、それを自然にサポートしましょう。たとえば、近くにいる子どもと一緒に遊び道具を共有する機会を作ったり、簡単な共同作業を促すことで、他者との関わりが自然に増えていきます。
シンプルな積み木は遊び方の幅が広く、とてもおすすめです。
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